Archive for the ‘労働集団訴訟’ Category

国際自動車事件第1次訴訟最高裁判決に対する原告団・弁護団・労組声明

2017-03-04

「残業代ゼロ」の賃金規則を許さず、労基法37条を武器に差戻し審を闘いぬく

 2017年2月28日、国際自動車第1次訴訟最高裁判決が出されました。主文は、東京高裁の判決を破棄し、差戻すというものです。

 判決は、国際自動車の賃金規則が、「『通常の労働時間の賃金』にあたる部分と『割増賃金に当たる部分』とを判別することができるか否か」、「判別できる場合には、割増賃金の金額が、『通常の労働時間の賃金』の金額を基礎として、労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の金額を下回らないか否か」を審理しなおすために、東京高裁に差し戻すと言っています。
「通常の労働時間の賃金」とは、残業をしない場合の賃金、すなわち所定内労働時間の賃金のことです。国際自動車の歩合給は、「通常の労働時間の賃金」から残業代等の割増賃金相当額を控除した賃金です。これに加えて、割増賃金に相当する金額を支払っても、元々の「通常の労働時間の賃金」から割増賃金相当額が控除されているのですから、「割増賃金に当たる部分」を支払ったことにはなりません。
 最高裁判決の論理を本件に当てはめれば、割増賃金が支払われたとは言えず、労基法37条違反により、会社は労働者に対して、未払いの割増賃金を支払わなければならなくなります。
 そして、最高裁が敢えて破棄自判とせず、原審で認められなかった労基法37条違反について審理するように高裁に差し戻したということは、最高裁が本件賃金規則が労基法37条に違反するものと認識していることを示唆するものです。
 最高裁は、高裁に対して、組合側の本来の請求である労基法37条による残業代の請求を認める方向での再検討を促したものであり、本判決は、会社側に対して本来の割増賃金を支払うよう判示したものと言えます。
 
一部の報道は、今回の最高裁判決を、「歩合給から残業代差し引く賃金規則は「有効」」と報道しました。これは判決の読み間違えによる誤報です。判決は、賃金規則が労基法37条に違反して無効なのか、有効なのかを審理するために、東京高裁に差し戻したのであり、賃金規則が「有効」か「無効」かは、そこで判断されます。
最高裁は、賃金規則が「有効」だなどとは判断していません。もし、「有効」という判断なら、労働者の請求を最高裁自ら棄却したはずであり、本件においては、高裁での差戻審では、我々の請求が概ね認められる可能性が高いものです。
 
国際自動車事件は、タクシーやトラックなど交通運輸業界に大きな影響を与えます。それは、多くのタクシー・トラックの会社において、国際自動車と同じような、「残業代ゼロ」の賃金規則が採用されているからです。給与明細に「残業手当」等の記載があるからといって、それだけで残業代を支払ったことになるわけではありません。「通常の労働時間の賃金にあたる部分」と「割増賃金に当たる部分」とを判別することができて、かつ、割増賃金の金額が、「通常の労働時間の賃金」の金額を基礎として、労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の金額を下回らないのでなければ、残業代等の割増賃金を支払ったとはいえないのです。
 労働時間の原則は、1日8時間、1週40時間です。これを超える労働はあくまでも例外であり、この例外的な時間外労働を抑制し、また、労働者に対する補償を行わせるために、労基法37条は割増賃金の支払いを使用者に義務付けています。これは労働者の生命と健康と生活時間を守るための重要な原則であり、決して骨抜きにしてはならないものです。
 最高裁判決の論理は、賃金規則が労基法37条違反であることを主張するための有力な武器になるものです。原告団、弁護団は、闘いの場を東京高裁に移して、労基法37条に関する最高裁の論理を武器として、労働者の権利擁護をはかり、「残業代ゼロ」の賃金規則を許さないために、闘い抜くことをここに宣言します。
 
2017年3月2日
 
 国際自動車事件原告団・弁護団
 全国際自動車労働組合
 首都圏なかまユニオン

労基法37条に基づく審理を求めて差戻し 国際自動車事件上告審判決

2017-02-28


本日、国際自動車第1次訴訟最高裁判決が出されました。
主文は、破棄・差し戻しでした。
理由の要旨は以下の通りです。
1 労基法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するには、労働契約における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否かを検討し、判別できる場合には、割増賃金の金額が、通常の労働時間の賃金の金額を基礎として、労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の金額を下回らないか否かを検討すべき(引用・高知観光事件最高裁判決、テック・ジャパン最高裁判決)。
売上高等の一定割合に相当する金額から同条に定める割増賃金に相当する額を控除したものを通常の労働時間の賃金とする旨が定められていた場合に、当該定めに基づく割増賃金が同条の定める割増賃金といえるか否かは問題となり得るものの、当該定めが当然に同条の趣旨に反するものとして公序良俗に反し、無効であると解することはできない。
2 しかるところ、原審は、労働契約における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金に当たる部分とに判別することができるか否か、判別できる場合には、割増賃金の金額が、通常の労働時間の賃金の金額を基礎として、労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の金額を下回らないか否かを審理判断していないから、審理不尽の違法がある。
3 なお、原審は、法内労働時間や法定外休日労働にあたる部分とそれ以外の部分を区別していないが、前者につき支払い義務を負うかどうかは、労働契約の定めに委ねられていると解されるから、前者と後者は区別する必要がある。
4 未払い賃金の有無及び額等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻す。
〇裁判官全員一致の判断

勝訴でも敗訴でもない、ドローの判決だと思います。ただ、請求を棄却しなかったので、差戻し審では十分に闘う余地があると思っています(ある意味、勝ち方向の判決かもしれないと思います。)。
公序良俗論はほぼ排斥され(若干の可能性は残しながらも)、労基法37条に違反しないかどうかを差戻し審で審査せよと言っています。
高裁で、もう一度、労基法37条違反を主張して、争っていく必要あります。
主戦場は、東京高裁になります。もう一度、労基法37条違反をしっかりと主張します。高知観光事件とテック・ジャパンの最高裁判決が引用されており、これを使って闘えという武器を与えてくれました。時間外労働時間によって控除額が増えていくような賃金が、通常の労働時間の賃金とはいえないだろうと思います。

国際自動車事件第1次訴訟最高裁判決(最高裁HP)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/544/086544_hanrei.pdf

日経は、「歩合給から残業代差し引く賃金規則は「有効」」と報道しました。判決の読み間違えによる誤報です。

残業代払わない規則「一律無効ではない」 審理差し戻し(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASK2X3TRGK2XUTIL01H.html

kmタクシー 国際自動車の残業代問題、最高裁→高裁へ差し戻し 「引き分け、再戦だ」と運転手側(BuzzFeed Japan)
https://www.buzzfeed.com/kazukiwatanabe/km-kokusai-saikousai-20170228?utm_term=.rsXlpjZp5#.prKmR6JRb
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170228-00010010-bfj-soci(Yahoo!Japan ニュース)

タクシー運転手「残業代ゼロ」規則、最高裁「無効とはいえない」…高裁差し戻し(弁護士ドットコムニュース)
https://www.bengo4.com/c_5/n_5769/

タクシー賃金訴訟 運転手勝訴の判決取り消し 最高裁(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170228/k10010893811000.html?utm_int=news_contents_news-genre-social_with-image

残業代控除、無効判決覆す タクシー会社規則に最高裁(共同通信)
https://this.kiji.is/209219357123706889?c=39546741839462401

歩合給から残業代差し引く賃金規則は「有効」 最高裁判決 (日経新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG28H94_Y7A220C1CR8000/

国際自動車事件第1次訴訟の最高裁弁論

2017-01-31

 本日、初めての最高裁での弁論をしてきました。緊張しました。国際自動車第1次訴訟の上告審です。
 口頭意見陳述の最後で、私(指宿)は、以下のように述べました。
 「労働基準法37条1項は、単に労働者の経済的利益を守るための規定ではない。長時間労働を抑制し、労働者の命と健康と生活時間を守るための規定である。電通過労死事件から日本社会は何を学ぶべきか。長時間労働が容認される企業は、労働者の命を奪うのである。これを容認してきた日本社会の責任も問われなければならない。
 労働者の命と健康と生活時間を守るために長時間労働を抑制している労働基準法37条1項の脱法行為を許してはならない。
 本件についての最高裁判決が、日本で働くすべての労働者の命と健康と生活時間を守るための適正なルールを確立することを切に望む。」
 判決日は、2月28日15時と指定されました。今日の弁論と報告集会及び記者会見の様子がネットニュースBuzzFeed Newsで報道されました(↓)。指宿

タクシー運転手の「残業割増」はどう支払われるべきか? 今後を占う注目の裁判 最高裁で弁論 BuzzFeed News

https://www.buzzfeed.com/kazukiwatanabe/kokusai-taxi-driver-zangyou?utm_term=.poMGwW6wr#.ysyBwMzwy

残業代払わない会社規則は無効? 最高裁が判断へ(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASK104GW0K10UTIL01M.html

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