技能実習制度:監理団体の監査の形骸化を総務省が指摘/不正行為見逃し98%

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総務省が、技能実習制度等外国人受入れに関する行政評価を発表し、①監理団体による監査の適正化、②技能実習制度推進事業(実施機関JITCO)の見直し、③(制度改正後の3年間の運用状況を把握して)技能実習制度の効果の検証を勧告しました。

 

 ①に関して、入管から不正行為として認定されたケースのうち、監理団体の監査において、実習実施機関に対して不正行為を指摘していたのは2%のみであり、それ以外の98%では不正行為を指摘していなかったことが報告されています。その原因として、「監理団体の監査において、一定の利害関係がある実習実施機関に対する公平・公正な監査を確保するための枠組みが未整備」であること、「監理団体の監査能力も不足」であることを指摘しています。

 

 ②に関して、JITCOの巡回指導の実効性が不明であることを指摘し、技能実習制度推進事業の入札の競争性を高め、効率性を高めよと言っています。

 

 ③に関して、技能実習生が単純労働力として雇用されている危惧があること、制度目的である技術移転の確認が形骸化していることを指摘しています。

 

 総務省の行政評価が、監理団体による監査が形骸化しており、JITCOの巡回指導の実効性が不明であることを指摘し、「途上国支援をうたう制度の建前と実態がかけ離れており、抜本的見直しに向けた検証が必要」と述べていることは評価できます。

 しかし、そもそも実習実施機関と利害関係のある監理団体が監査を行うこと自体に無理があり、不正行為が行われているケースにおいては、むしろ監理団体が主導している場合もあることを見逃しています。また、技能実習制度推進事業による制度の適正化などあり得ないのに、入札の競争性を高めることで改善がありうるかのように勧告していますが、無意味です。そして、技能実習生が単純労働力として使われていること、制度目的である技術移転はもともと形骸にすぎないことを明確に認めず(実質的には認めていますが)、「抜本的な見直し」とは技能実習制度の廃止以外にあり得ないことを述べていないことが極めて不十分です。

 

 ここまで、制度の根幹に関わる問題点を指摘しながら、総務省としては制度の廃止までは勧告できないものなのでしょうか。それとも、わざと明確な結論を述べるのを避けて、世論が制度の廃止を突きつけることを待っているのでしょうか。いずれにしても、この問題に取り組んできた弁護士として、私は、今こそ、制度を廃止すべきことを強く主張します。

 

 <<資料>>

 監査98%不正見落とす 外国人実習 総務省が改善要望【毎日新聞】2013年4月20日記事

 

外国人実習の監査形骸化 98%で不正見落とす【共同通信】2013年4月19日

http://www.47news.jp/CN/201304/CN2013041901001089.html

 

受け入れ企業の指導徹底を=外国人技能実習制度で-総務省勧告 【時事通信】2013年4月19日

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013041900164

 

【総務省HP 報道資料】

外国人の受入れ対策に関する行政評価・監視
-技能実習制度等を中心として-
<結果に基づく勧告>

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/73055.html#kekkahokokusyo

 総務省では、技能実習生、外国人看護師候補者等及び留学生の適切な受入れ及び管理を推進する観点から、技能実習生の適切な受入れに向けた取組状況、EPA外国人看護師・介護福祉士候補者の日本語能力の向上に向けた取組状況、留学生の在籍管理に関する取組状況等を調査し、その結果を取りまとめ、必要な改善措置について勧告することとしましたので、公表します。

要旨 → http://www.soumu.go.jp/main_content/000219636.pdf

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