外国人労働者受け入れ問題と非正規滞在外国人問題はどういう関係にあるか?

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 外国人労働者受け入れ問題と非正規滞在外国人問題(収容・送還問題)に取り組んできて、この2つの問題がどうつながるのか、はっきりとわからなかった。それが、先日、メディアの取材を受けていて、回答しながら、ぴったりとつながった。
 取材は、外国人労働者受け入れ問題がテーマだった。私は、技能実習制度を廃止して特定技能に一元化し、そして、特定技能において送出し国における中間搾取をなくすために、労働者のリクルートを民間ブローカーに任せないで、日本と送出し国の政府が二国間協定を結び、二国間でハローワークのような制度(これは、韓国の雇用許可制をモデルにした制度である)を作るべきだと主張した。記者は、「民間ブローカーが排除されると、日本に来る外国人労働者がいなくなるのではないか?」と質問してきた。確かにそうだ。技能実習制度の送出し機関は、不当な中間搾取をして、技能実習生の数年分の年収に相当する金額(ベトナムの場合、年収の4年分。日本円で約100万円程度)を支払わせている。これがあるから、ブローカは必死で人を集めて、日本に送り込むのである。だからこそ、今、38万人の技能実習生が日本で働いているのだ。これがなくなったら、縫製業、農業、建設業、食品加工業等、多くの産業で人手不足になる。また、少子化の進む日本の将来を考えた時に、日本に来てくれる外国人労働者がいなくなってしまうかもしれず、これは、日本の社会にとって由々しき事態である。
 しかし、中間搾取をするブローカーをのさばらせ、外国人労働者の犠牲の上に、日本社会が外国人労働者を確保するというのは間違った政策である。これは直ちにやめるべきである。これを止めた時、我々は何を考えなければならないのか?
 中間搾取をするブローカーによる日本への送出しがなくなった時、日本に来たいという外国人労働者はいるだろうか? いるかもしれない。しかし、日本は外国人労働者にとって住みやすい国、働きやすい国ではない。特定技能も様々な欠陥がある。多文化共生政策は、各自治体の努力による意義のある取り組みはあるものの、日本全体で考えるとまだまだである。第一、日本政府は、「移民政策は取らない」という訳の分からないことを言っている。そして、万が一、外国人が在留資格を失ったとき、日本は地獄のような国である。日本の在留資格のない外国人、すなわち非正規滞在者への対応は人権も人道もない、凄まじいものである。私は、日本の外国人には人権が保障されていないと思っている。なぜなら、マクリーン事件最高裁判決は、外国人の人権を在留制度の枠内でだけ認めると言っているからだ。これは、本来の意味での人権ではない。これが、最も表れているのが、非正規滞在外国人に対する政策、特に収容・送還政策である。
 これまで、日本の国家も社会も企業もそして市民も、本気で多文化共生政策を進めなければならないというインセンティブを持っていなかった。しかし、外国人労働者が日本に来てくれなくなるとなれば話は別である。本気で多文化共生政策を進める。そして、その前提として、非正規滞在者を含めた外国人の人権を保障すること。そういうことを行わなければ、日本に外国人労働者は来てくれなくなる。そういう危機意識を日本の国家も社会も企業もそして市民も持つべきではないのか。
 これが、私が気づいた、2つの問題の結合方法である。

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