東京福祉大学「スラップ訴訟」判決・記者会見
東京福祉大学が元教授を名誉棄損でていた事件で、請求棄却判決(元教授勝訴)
「元総長が『金儲け』のために留学生を大量に受け入れ」という発言は違法性がないと判断
2024年9月12日 弁護士 指宿 昭一
連絡先 電話03-6427-5902
判決 9月9日(月)9時50分 東京地裁803号法廷
東京地裁民事12部 令和4年(ワ)第5683号 損害賠償請求事件
記者会見 9月13日(金)11時~ 司法記者会(東京地裁2階)
会見者 被告・田嶋清一(元東京福祉大学心理学部教授)・弁護士・指宿昭一
本件は、東京福祉大学を運営する学校法人茶屋四郎記念学園が、田嶋清一・元教授が大学の名誉を棄損した等として、1100万円の損害賠償の支払いと謝罪文の交付を求めた事件です。原告は、被告の名誉棄損行為として、被告が記者会見で、「元総長である中島恒雄氏が『金儲け』のために留学生を大量に受け入れていた」と発言したこと等11項目を挙げていました。
判決は、この発言は、「虚偽の事実を適示」したものではなく、「論評」に当たり、「その前提としている事実は、重要な部分について真実である」から違法性がない等として、原告の請求を棄却しました。
被告は、2004年4月から原告との間で労働契約を締結し、教授として就労してきましたが、2012年3月で雇止めされ、地位確認等請求訴訟を起こして勝訴しました(第一次訴訟)。しかし、原告が被告に授業をさせなかったので、再び地位確認等請求訴訟を提起し(第二次訴訟)、原告が、被告に授業を担当させるなどの条件での和解が成立しました。ところが、原告は、被告が定年を迎えるまで授業を指せなかったため、被告は原告に対し、損害賠償請求訴訟を提起し(第三次訴訟)、106万円の賠償金の支払いを命ずる判決を得ました(控訴されず、確定)。
2019年、東京福祉大学の大量の留学生所在不明者問題がマスコミ報道され、社会的に大きな問題になりました。同大学総長であった中島恒雄元氏は女性教職員への強制わいせつ罪で実刑判決を受け、文科省は中島氏が運営に関与するのは不適切だと指導し、大学もこれを受け入れていたのに、2020年11月20日付で総長に復職しています(2023年9月30日、退任)。こうした様々な問題について、田嶋元教授は批判し、発言をしてきました。本件訴訟は、これに対する「スラップ訴訟」です。
なお、田嶋元教授は、学校法人茶屋四郎次郎記念学園と生沼礼一・東京福祉大学教授に対して、名誉棄損に基づく損害賠償請求を提起しており(東京地裁民事44部・令和5年(ワ)1138号)、10月9日13時30分から、東京地裁632号法廷で尋問が行われます。ぜひ、取材をお願いします。