ブルームバーグなどの報道によると、米国のマッキンゼー・アンド・カンパニーは、同社のコンサルタント約3000人に対して、パフォーマンスが不十分であるという「懸念」(concern)の評価を伝えました。同社では、通常、「懸念」の評価が下された場合、約3か月間の改善期間に改善が見られない場合、退職に向けたカウンセリングが開始される可能性がある、とのこと。その後、同社は、北米オフィスの一部の上級スタッフらに対して、「昇進するか、さもなくば退職せよ」(Up or Out)という警告のメモを送ったそうです。また、一部の社員は、プロジェクトにアサインできない状態にある、とのこと。
もし、日本で同じことが行われたら、どうでしょうか? 会社が、「懸念」を表明したり、改善が見られないと判断した場合に「退職に向けたカウンセリング」を行うこと自体は違法とはいえません。ただ、労働者には退職を受け入れる義務はなく、退職したくなければ働き続けることができます。「昇進するか、さもなくば退職せよ」と警告されて、昇進できなかった場合にも、退職する必要はありません。プロジェクトにアサインできなくても、労働者が会社に対して労務を提供する意思を表示していれば、会社は賃金支払い義務を負います。
会社が、このように、様々な形で退職勧奨をしてきた場合、退職パッケージ(労働者が退職に合意することを条件に、労働者に提示する金銭等の条件)を提示してくることが普通です。退職パッケージの金額等に納得ができなければ、増額交渉をすることができますし、会社が増額に応じなければ、退職を受け入れなければいいのです。交渉は、弁護士に依頼して行うこともできます。
退職勧奨に納得できないのに受け入れるのではなく、納得ができる条件に向けて交渉するか、働き続けるかを労働者の意志で選ぶべきです。