ベトナム人技能実習生・新生児「死体遺棄」事件 7月20日熊本地裁有罪判決に強く抗議する声明

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ベトナム人技能実習生・新生児「死体遺棄」事件 7月20日熊本地裁有罪判決に強く抗議する声明

本日、熊本地方裁判所において、22歳のベトナム人技能実習生女性(以下、単に「実習生」という)が、死体遺棄罪で有罪判決を受けた(以下「本件」という。)。起訴状によると、実習生は、2020年11月、自宅で死産した双子の新生児の遺体を段ボール箱に入れて部屋に放置したとされている。

訴訟では、検察側は「妊娠から遺体の放置まで一連の行為は、帰国を恐れ事実を隠そうとするもの。段ボールに入れ放置したのは社会通念上認められる埋葬方法ではなく死体遺棄罪が成立する」として死体遺棄罪の成立を主張し、他方、弁護側は「実習生の行為は我が子に対する愛情による埋葬を前提とした安置。実習生のベトナムの故郷では土葬が一般的で、適法の安置行為だった」と無罪を主張していた。実習生も「我が子を捨てるつもりはなかった」と話していた。ところが、裁判所は、弁護側の主張を排斥したものである。

 

そもそも技能実習生が妊娠して出産することも、人が人として生きる上で当然に認められるべき権利である。にもかかわらず、技能実習生の女性が送出機関等により妊娠、出産を禁止されるルールを押し付けられ、妊娠、出産した実習生が、受入れ企業を離脱したり、出産した乳児を置き去りにせざるを得ない状況に追い詰められる事件が相次いでいる。これらは、妊娠、出産すれば、自己の意に反して強制帰国させられるとの恐怖を背景にしている。

本件の実習生も、雇い主、監理団体から妊娠の有無について尋ねられたうえ、監理団体から「妊娠などしないように」と指示されていたという。このように実習生には、意に反することを強制されていたという点で被害者としての面があるのに、これを無視して刑事責任を問うこと自体に本件判決の大きな問題がある。

 

次に、本判決は、刑法の解釈の観点からも問題がある。本件が有罪として確定してしまうと、技能実習生のみならず孤立出産(死産)した全ての女性が、出産後の身体への多大な負担にもかかわらず、出産当日に埋葬に向けた法的に正しい手続きに着手しないと死体遺棄罪に問われることになりかねない。実際、本件で実習生が遺体を自宅で保管したのは死産した15日午前9時から翌16日の午後6時までに過ぎない。本件判決は「遺棄」行為を無限定に拡大するものであり、孤立出産に伴う死産事案のほとんどが犯罪とみなされてしまいかねない点でも問題が大きい。

また、異国の地で言葉も地理も社会システムも分からずに独りで出産し、かつ地元にある限られた品々で埋葬の準備を行った実習生を罪に問うというのは、病者に鞭打つ行為に等しい。実習生は、死産当日は体力的・精神的に疲弊していたのであるから、実習生には、死産となった子の埋葬方法について、出産当日に直ちに正しい判断を行う期待可能性は無かったというべきである。本件は、この点からも刑事責任を問うことができる事案ではないことは明らかである。

 

当連絡会は、妊娠、出産すると強制帰国させられるという技能実習生のおかれた状況を無視し、また孤立出産した女性を広範に犯罪者と扱うおそれのある本件判決に強く抗議するものである。

また、本件は、既に述べたとおり、技能実習生の妊娠・出産の制限という極めて大きな人権上の問題を含むものであって、人権侵害の温床となっている技能実習制度の構造的問題の現れであるから、当連絡会は、併せて、改めて技能実習制度の廃止を強く求めるものである。

以 上

 

2021年7月20日

 

外国人技能実習生問題弁護士連絡会

共同代表 指宿 昭一

共同代表 小野寺 信勝

共同代表 大坂 恭子

事務局長 髙井 信也

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