銚子事件(中国人技能実習生死亡事件)判決

 2011年10月29日、銚子の水産加工会社で、中国人技能実習生が日本人従業員に鉄製の棒で殴られて死亡した「銚子事件」で、昨日、加害者と会社に対して1870万円の損害賠償を認める判決が出ました。
 判決は、本件暴行が、会社の事業所内において、業務時間内に発生したものであり、そのきっかけは、加害者の運転するフォークリフトと被害者が運転するフォークリフトの接触事故によるものであること、加害者と被害者が互いに悪感情を持っており、本件暴行はこれが発展したものであるが、両社の関係は会社の従業員であることを前提にしたものであり、関係が良好でないのは、両社に一緒に作業をした際などに、加害者が被害者の作業内容に注意し、これに被害者が反発して従わなかったからである、として本件暴行は「事業の執行について」(民法715条1項)なされたものであると判断して、会社の責任を認めました。
 過失相殺は認めませんでした。
 逸失利益は被害者の来日前(製薬会社の営業職)の賃金(年収約113万=中国農村部の賃金としてはかなり高い)を基準にし、技能実習と同じ水産加工業の賃金(被告からは年収約16万円程度という資料が提出されていた)を基準にしませんでした。中国の物価上昇や賃金上昇などを考慮して、日本における被害者に実収入(年収約204万円)を基準にするか、少なくとも賃金センサスの3分の1(183万円)を基準にすべきだとする原告の主張は認められませんでした。
 慰謝料は1300万円が認められました。判決中には明記されていませんが、日本人独身男性の赤本基準(2000万~2200万円)のうち、精神的苦痛を慰藉するための性質を有する部分を約半分(1000万円程度)と考えて、これは全額を認め、被害者の財産的損害の算定が困難な場合の補完・調整的な役割や遺族の生活保障としての役割を果たす部分が残りの半分と考えて、その3分の1(300万円程度)として、合計1300万円としたものであると思われます。
  なぜ、被害者の実習生が亡くなったのか、二度とこのような事件が起きないようにするためにはどうすべきなのかを考えながら、取り組んできた事件でしたが、まだ、その結論は出ていません。実習生が自由に物が言え、職場を変わる自由があれば、この事件は起きなかったと思いますが、制度の問題だけでは割り切れないという思いもあります。
 引き続き、技能実習制度の廃止と外国人労働者の権利擁護に取り組んでいきたいと思います。
 弁護団は、板倉由実弁護士と私でした。
中国人実習生の傷害致死事件で1870万円賠償命令=銚子市の水産加工会社と同僚に―日本華字紙
配信日時:2014年10月7日 11時12分
http://www.recordchina.co.jp/a95281.html
1870万円賠償命令 千葉、中国人実習生死亡で
2014.9.30 19:45 産経
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140930/trl14093019450009-n1.htm

 

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