お知らせ

国際自動車(国際労供ユニオン)事件で勝利命令

2019-03-05

昨年12月10日、国際自動車(国際労供ユニオン)事件で勝利命令を得ました。代理人は谷田和一郎弁護士と指宿です。

国際自動車事件(平成29年不第45号事件)平成30年12月10日
 会社が、組合と労働者供給に関する基本契約(タクシー乗務員の定年後雇用について、労働組合が会社の申し出に応じて組合員を供給すること等を内容とする契約)を締結しないことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合活動に対する支配介入に当たるとして、救済された例。

命令概要
http://www.toroui.metro.tokyo.jp/image/2018/meirei29-45.html

命令詳細
http://www.toroui.metro.tokyo.jp/image/2018/meirei29-45_besshi.html

判断の要旨
⑴  会社がX組合との基本契約の締結を拒否した本当の狙いは、X組合が取り組んでいる未払賃金訴訟提起の組合活動を阻害し、その中心人物である執行委員長を会社から排除するとともに、未払賃金訴訟の原告となっている同労組の組合員らに対して定年後に再雇用しないという不利益を与えることであるとみるほかない。

⑵  会社は、X組合が組合に影響力を及ぼしているものと考え、X組合を嫌悪したのと同じ理由で組合を嫌悪するとともに、組合の組合員が全員未払賃金訴訟の原告となっていることから、未払賃金訴訟提起の活動を阻害し、その原告である組合員らに対して定年後に再雇用しないという不利益を与えることを企図して、組合との基本契約の締結を拒んだものといわざるを得ない。

⑶  会社は、組合とX組合は実質的に同一であると判断し、基本契約の締結を拒否したと主張する。

  そもそも、会社がX組合との基本契約締結を拒否することに合理的な理由は認められないから、X組合と組合が実質的に同一であったとしても、基本契約の締結を拒否する理由とはならない。

  組合は、独自の規約をもち、執行委員長等の役員を選出し、執行機関、決定機関を有する等自主性を持ち、独自の財源を持ち、独自の活動を行っているもので、独立した組合と認められる。

⑷ 不当労働行為の成否

会社は、未払賃金訴訟を提起した組合員らを会社から排除するために、およそ合理的とはいえない理由を述べて組合との基本契約を締結しなかったものといわざるを得ない。この会社の対応は、未払賃金訴訟の提起という組合活動を阻害し、組合に不利益を与えるものであり、個々の組合員に対しても定年後の雇用が奪われるという不利益を与えるものである。

したがって、会社が、組合と基本契約を締結しないことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合活動に対する支配介入に当たる。

 

明治大学事件で勝利命令

2019-03-05

明治大学を相手方とする不当労働行為救済申し立て事件で、都労委から勝利命令を得ました。代理人弁護士は指宿です。

明治大学事件(平成28年不第90号事件)平成31年3月4日
 組合員の非常勤講師契約の更新等を議題とする団体交渉において、大学が具体的な説明を行わなかったこと、 及び大学が団体交渉申入れに応じなかったことは、不当労働行為であるとして救済された例。

命令の概要
http://www.toroui.metro.tokyo.jp/image/2019/meirei28-90.html

命令の詳細
http://www.toroui.metro.tokyo.jp/image/2019/meirei28-90_besshi.html
判断の要旨
 ⑴ 本件団体交渉における大学の対応について(争点1)
  団体交渉に先立って、大学として法学部執行部の教授が出席する本件事務折衝が行われた。第2回事務折衝では、組合が、一連の行為についてXが謝罪文を提出することで平成28年度の雇用を認めるよう求めたのに対して、大学は、謝罪文の内容は信頼回復には不十分であり、今後信頼回復の措置が執られるのであれば、28年度の雇用は無理であるが、29年度の雇用を検討する余地はある旨を説明した。また、組合が事務折衝の継続を求めたのに対して、大学は、団体交渉による交渉を求めた。本件においては、このような経緯があることを十分に考慮する必要がある。大学には、上記経緯を踏まえた上で交渉が継続できるような対応が求められていたものというべきである。
 大学は、第1回及び第2回の団体交渉では、Xの雇止め理由について、法学部の判断を支持するという結論を述べるだけで、「教育機関として妥当と判断した」、「一連の総合的な判断を支持した」等の抽象的な説明を繰り返し、法学部が、本件事務折衝の経過を踏まえた上で、Xとの信頼関係を回復できず、同人を雇止めにすると判断するに至った具体的な根拠等について、何ら回答していない。また、大学は、第3回の団体交渉において、Xの雇止めの理由と謝罪文の評価について回答したものの、雇止め決定プロセスや29年度のXの雇用に係る組合の質問には明確な回答をしておらず、信頼関係の回復についての議論になることもなかった。
 本件事務折衝において、大学が、今後信頼回復の措置が執られるのであれば、29年度の雇用を検討する余地がある旨説明していたことからすれば、Xの29年度の雇用に向けた適時の交渉が必要であった。それにもかかわらず、本件団体交渉における大学の上記対応は、組合と法学部が事務折衝を重ねて詰めてきた議論を後戻りさせるものといえ、事務折衝の経緯を踏まえた上で交渉が継続できるような対応であったとは到底いうことができない。大学は、法学部の教授を出席させるか、又は、法学部から十分な説明を受けた理事を出席させ、事務折衝の経緯を踏まえた上での交渉に努めるべきであったといえる。
 したがって、本件団体交渉における大学の対応は、不誠実な団体交渉であったといわざるを得ない。

 ⑵ 大学は、組合の28年9月19日付及び11月11日付団体交渉申入れを拒否したか、拒否したといえる場合に正当な理由があったか否かについて(争点2)
 大学は、28年10月3日付け及び11月28日付けの回答書において、1)第2回及び第3回団体交渉において、法学部教授会決定に至るまでのプロセスを十分説明しており、これ以上団体交渉を重ねても、大学の回答に変化はないこと、2)大学としては、組合が今後の要求の趣旨や争点を明らかにせず、漫然と従前の要求を繰り返す限り、当面団体交渉に応じるつもりはないことを回答している。これは、要求事項について交渉の余地はなく、団体交渉が行き詰まっていることを理由に、組合が従前の要求事項を繰り返す限り、団体交渉に応じる必要がないとの意思を示したものと解釈するほかなく、団体交渉を拒否したものといえる。
 そして、前記⑴で判断したとおり、本件団体交渉において、大学は誠実交渉義務を尽くしておらず、団体交渉が行き詰まりの状態に達していたとは認められないから、大学が組合の28年9月19日付及び11月11日付団体交渉申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。

衆議院法務委員会で意見陳述 2018年11月22日(木曜日)

2019-01-06

2018年11月22日(木曜日)、衆議院法務委員会で入管法改正法案について意見陳述しました。
衆議院のHPに議事録が出ていました。

第197回国会 法務委員会 第6号(平成30年11月22日(木曜日))
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000419720181122006.htm

委員会経過 第197回国会 第23号 平成30年11月22日木曜日
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kouhou.nsf/html/kouhou/AF2392_1971122.htm

○葉梨委員長 ありがとうございました。

 次に、指宿参考人にお願いいたします。
○指宿参考人 日本労働弁護団常任幹事で弁護士の指宿昭一と申します。

 意見を述べさせていただきます。

 私は、この十一年間で、外国人研修生若しくは技能実習生を当事者とする民事訴訟ないし労働審判を十六件担当してきました。原告と申立人の数を数えてみましたところ、四十一人になります。これ以外にも、本当にたくさんの技能実習生からの法律相談を受け、交渉によって事件を解決したことも何度もあります。

 また、十年前に外国人技能実習生問題弁護士連絡会という弁護士の団体を結成し、その共同代表を務めております。この団体は、全国に約百五十名の弁護士の会員が加入していまして、全国で数多くの技能実習生から相談を受け、また訴訟などに取り組んでいます。

 また、これとは別に、外国人労働者弁護団という、これも弁護士の団体の代表も務めております。これは、技能実習生を含め、それ以外の外国人労働者も含めた電話相談を日常的に行い、また、年に一、二回の無料相談会などを開催するなどして、外国人労働者の労働問題に取り組んでおります。

 私のこのような経験を踏まえて、これから意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、外国人労働者受入れ制度を創設すること自体についての意見を述べます。

 今回の法案は、外国人労働者の受入れを目的とする制度をつくるということを正面からうたっています。しかし、先ほど鳥井参考人からも話があったように、実際にはもうずっと前から、非熟練分野を含めた外国人労働者の受入れは行われてきました。

 昨年、二〇一七年十月末の段階で、約百二十八万人の外国人労働者が日本で働いているという数字が出ています。そのうち約二十六万人が技能実習生です。そして、資格外活動の人が約三十万人です。これは、その多くが留学生だと思われます。実際には、このように多くの非熟練の外国人労働者の受入れをしながら、これを正面から認めてこなかったということが極めて異常なことであったと思います。

 技能実習制度の目的は、技術、技能の移転により国際貢献をすることだと説明されてきました。しかし、これは真っ赤なうそです。技能実習制度が労働力確保の手段として使われてきたことは、誰の目にも明らかです。マスコミでもそう報道されていますし、いや、法務省自身がそのことは百も承知なのではないでしょうか。これまで、カラスは黒いという真実を覆い隠して、政府はカラスは白いと言い続けてきたようなものです。もうこういうことはやめるべきです。

 今回の法案の目的が外国人労働者の受入れであることを明確に示したことによって、大きな議論が巻き起こっています。いわば、パンドラの箱があいたわけです。そうであれば、外国人労働者の受入れをめぐる本格的な議論をしっかりすべきです。この機会に、国会でも、また市民社会においても、そしてマスコミ等々においてもしっかり議論する、そのチャンスが今来ているんだと思います。拙速な議論で、中身の議論をきちんとしないで法案を通してしまうようなことは決してあってはならないと思います。

 技能実習制度について、もう少し述べさせていただきます。

 技能実習制度には構造的な問題があります。時給三百円や四百円で残業している技能実習生は、今も数多くいます。今もです。昨年の技能実習法施行以降も、私や私たちのところにはたくさんのそのような相談が来ています。

 先日、これは少し前の事件ではありますけれども、十一月九日に、私の担当している事件で、水戸地裁が、技能実習生の未払い残業代請求について約百万円の支払いを命じました。これはきょうの資料の二の一から三に入っていますので、ごらんいただければと思います。

 この裁判所の事実認定を前提にすると、残業の時給が四百円でした。もちろん、これは最低賃金法に違反する違法な賃金です。このようなことが日常茶飯事で今も多くの技能実習生の働く現場で行われているのです。

 私の資料の一をごらんください。厚生労働省が毎年出している資料です。外国人技能実習生の実習実施機関に対する監督指導、送検等の状況という資料です。

 二〇一七年の場合、一枚めくっていただいて、二ページの上の方を見ていただくと、「全国の労働基準監督機関において、実習実施者に対して五千九百六十六件の監督指導を実施し、その七〇・八%に当たる四千二百二十六件で労働基準関係法令違反が認められた。」と記載されています。そして、この後の方に出てくるんですが、悪質な労働基準法令違反が認められて労働基準監督機関が送検した件数が三十四件あります。労基法違反で送検されるということはまれなことですから、これは決して少ない数字ではありません。

 そして、幾つか事例が載っています。賃金月額六万円の事例、残業時給が三百五十円の事例、四百円の事例、そして時間外労働が月百六十時間の事例、労災隠しを行った事例、複数の技能実習生が、課長がけがをした技能実習生の胸ぐらをつかんで殴ったと証言している事例などがここでは報告されています。

 これは、この年の報告書だけじゃありません。ぜひ、さかのぼって見てください。毎年、こういう報告がされている、同じような数字が出ています。もっとひどい事例もたくさん出ています。なお、二〇一八年のデータはまだ出ていませんが、私どもが実際に相談を受けている実感からすれば、またことしも同じようなデータが出てくるのではないかと考えています。

 では、技能実習生はこうした労働基準関係法令の違反に対して、声を上げることができているのでしょうか。労基署などの機関に相談し、是正を求めて申告することができているのでしょうか。

 これも資料を見ていただきたいんですが、五ページ、申告状況というデータ、(1)のところですね。平成二十九年のところを見ると、八十九という数字が出ています。八十九件ですよ、一年間で。違反事例が四千二百二十六件出てきているのに、八十九件しか申告ができていないんです。パーセントでいえば、たったの二%です。九八%の違反については、技能実習生は申告をしていないんです。

 この事例の最初のところ、三ページの事例とかを見ると、これは「情報を端緒に、」と書いてあるんですね。誰かが情報提供したんだと思います。四ページの事例三、下の方を見ると、これも「情報を端緒に、」と。本人じゃなくて、誰かが通報してくれて、それで調査が始まったということですね。

 なぜ、技能実習生は声を上げることができないのでしょうか。単に知識の不足とか言葉の問題ではありません。三つの原因があると思います。

 一つ目の原因は、まず、送り出し国において、送り出し機関から多額の渡航前費用を徴収されているということ。そして、権利侵害に対して声を上げないという約束をさせられて、しかも、その約束を担保するために保証金を徴収され、違約金契約を締結させられているんです。さらに、この違約金契約には保証人までつけられています。

 渡航前費用というのは、技能実習生のその国における数年分もの年収に当たるような金額で、私が聞いた事例では、ベトナムの場合で百万円程度取られている人がたくさんいるということを聞いています。ほとんどの場合、この渡航前費用を借金をして工面しています。この借金を返さなければいけませんから、解雇されたり、途中で帰国させられたりしたら大変なことになるわけです。借金だけが残るわけです。だから、技能実習生は、どんな違法な労働条件でも我慢して働かざるを得ないんです。

 二つ目の原因は、日本で職場を移動する自由がないことです。技術、技能を習得して国際貢献をするという建前のために、技能実習生は、同じ職場で計画に従って実習をしなければならないことになっています。その職場に問題があっても、他の企業に転職することができません。

 よく日本では、嫌ならやめて、よそで働けばいいということが言われます。ところが、技能実習生にはその自由すらないのです。残業時給が三百円で、これはおかしいと思っても、それを労基署に申告して、それが原因で解雇されたり、あるいは帰国させられたら、借金だけが残ってしまうわけです。

 こういう違法な事例の場合には、一応、制度上は、例外的に実習先を移ってもいいという制度にはなっています。でも、実際には移れません。まず、移る先が見つけられない。我々弁護士や労働組合が一生懸命探して、まれに移るところが見つかることがありますが、それは極めて困難です。三年間働いて、借金を返済した上で、家族のために稼ぎを持ち帰ろうと思って日本に出稼ぎに来ている実習生たちは、途中で帰国することになれば借金だけが残る。だから、申告なんかとてもできないわけです。

 三つ目の原因は、技能実習生が権利を主張すると、受入れ企業や監理団体によって、本人の意思に反して強制的に帰国させられてしまうということがあるということです。これを我々は強制帰国というふうに呼んでいます。

 もちろん、受入れ企業や監理団体に強制帰国をさせる権限があるわけではありません。暴力や脅迫によって、本人の意思に反して強制的に帰国させるということは犯罪です。しかし、そういう信じられないことが実際には行われているんです。しかも、そういう受入れ企業の犯罪行為はほとんど取り締まられていません。実際に、私の事務所に相談に来た技能実習生が、その一週間か二週間後に帰国させられてしまった、強い圧力を受けて帰国させられてしまったということがあります。また、民事裁判の裁判で、強制帰国が不法行為であると認定されて損害賠償が認容されたということもあります。これは資料三につけておきました。新聞記事をつけておきました。

 技能実習生は時給三百円の労働者と言われていますが、その背景として、実習生が物を言えない労働者であるという事実があります。これは、一部の悪い受入れ企業や監理団体がたまたま違法行為をしているという問題ではありません。技能実習制度の構造的問題に起因しています。

 今回の法案審議の前提として、法務省は、なぜこの技能実習制度の廃止を打ち出さなかったのでしょうか。法務省も、この制度が何度も改正に改正を重ねても、この構造的問題が解決できてこなかったということは知っていると思います。本当は、技能実習制度の廃止を前提に、新たな外国人労働者受入れ制度の創設を提案すべきだったと思います。技能実習制度の過ちを認めて、それを前提に議論をしようとしないから混乱が生じるのだと思います。

 今、技能実習生の失踪ということが言われています。私は、失踪ではなくて、これは緊急避難ではないかと思っています。この失踪の調査結果の誤りという問題がありますが、これも先ほど述べたような法務省の姿勢に基づくものだと思います。技能実習制度の失敗を認め、同じような人権侵害、権利侵害を繰り返さない制度をつくるという強い決意を持って新制度の検討に臨まなければ、また同じ過ちを繰り返します。新制度を第二の技能実習制度にしてしまうようなことは絶対にあってはなりません。

 実習生に対するさまざまな人権侵害の事案については、ほかにも新聞記事等々、資料をつけておきましたので、ごらんください。

 もうほとんど時間がありませんので、外国人労働者の受入れ政策、今回の新制度について、課題、問題点について少し簡潔に指摘をしたいと思います。

 まず、職場移動の自由を完全に保障する必要があります。

 一応、今度の新制度では認められているとされていますが、本当にそれが実質的に保障されるか、それはまだ未知数です。ハローワークなどによる情報提供やあっせんなどが行われて本当に移る先が見つからなければ、絵に描いた餅になると思います。

 二点目に、送り出し国におけるブローカー規制が必要です。

 これは、単に日本の制度として保証金を取っちゃいけないよとかいうだけではなくて、送り出し国との条約ないし二国間の協定を結んだ上で、相手国にブローカー規制を義務づけるべきです。多額の渡航前費用を取ることは禁止すべきです。保証金、違約金契約も禁止すべきです。そして、その取決めに違反があった場合は、その国からの受入れは停止すべきだと思います。

 三点目に、日本におけるブローカー規制も必要です。

 これは、登録支援機関が悪質なブローカーとして中間搾取や人権侵害をする危険がとても高いと思うからです。これは先ほど坂本参考人もおっしゃられていたので、これぐらいにします。

 四点目、家族帯同を認め、定住化に結びつく可能性を開くこと。

 五年間、家族と離れて暮らせというのは、余りにも過酷であり、人権侵害ではないでしょうか。実習生の期間と合わせれば十年ということもあるわけです。ここはぜひ見直しが必要だと思います。

 そして、果たして一号で在留資格の上限を決める必要があるのか。そして、一号から二号に移るのは厳しくすべきだという意見もあるようですけれども、定住化につながる受入れというのは、外国人労働者の利益になるだけではなくて、日本の受入れ企業、また日本社会の利益になるということも考えるべきだと思います。

 五点目、基準の透明性、客観性を確保する必要があると思います。

 受入れの数や職種、在留資格の更新、変更の基準を法務省の裁量に任せて密室で決めるのではなくて、公開の審議会などで毎年きちんと審議をして決めていくべきだと思います。

 受入れ後の共生政策について少し述べます。

 まず、支援体制については、登録支援機関に任せるのではなくて、国や国から委託されたNGOなどが責任を持つべきだと思います。

 日本語教育については、国が基準を設け、また、予算も確保するべきだと思います。

 共生政策について。受入れと共生政策の実現は、車の両輪として不可欠のものです。共生政策の基本法を設け、これを国の責務として明確に位置づけ、財政的な根拠をつくるべきだと思います。

 最後に、入管庁の設置について。

 外国人政策は、共生政策と在留管理政策の二つが必要です。共生政策抜きで在留管理だけ行うというのはおかしいことであるし、また、それだけをやるならば、何も入管庁にする必要はないと思います。両方の政策を行う、例えば共生庁あるいは多文化共生庁、外国人労働者庁といった省庁を、法務省のもとにではなく、別につくるべきだと思います。

 そして、入管行政全般については、現在の出入国管理における身体拘束制度は、収容の必要性や相当性に関する要件や期限を設けないものとなっています。無期限に、百年でも収容できるわけです。これは国際的な基準に適合していません。新たな受入れ制度を創設するに当たっては、国際人権基準に適合した入管行政の整備が必要です。

 これだけ課題のある法案です。数日の審議で決めることができるのでしょうか。できないと思います。

 外国人労働者の受入れは、目先の人手不足対策のため、使い捨ての受入れという観点でやってはだめです。この問題は、日本がどういう国と社会を目指していくのかということにかかわる、極めて重要な問題です。ぜひ、時間をかけて慎重な審議をお願いしたいと思います。

 以上で終わります。(拍手)

○葉梨委員長 ありがとうございました。

弁護士向け交渉学セミナーのお知らせ

2019-01-03

 1月6日、12日、2月10日に弁護士向けの交渉学セミナーを行います。弁護士限定企画です。
 交渉学コンサルの向展弘と私(弁護士・指宿昭一)が講師です。2人とも、NPO法人日本交渉協会交渉アナリストの資格者です。
 ぜひ、ご参加ください。

弁護士 交渉学で「短期間に高水準解決!!」 紹介やリピーターを創る顧客満足度UP!セミナー
交渉学による”主導権の戦略”で依頼者満足を実現! 3ヶ月で売上UP! を大公開!
2019/1/ 6(日) 15:00~ 暁法律事務所
2019/1/12(土) 15:00~ 暁法律事務所
2019/2/10(日) 15:00~ 暁法律事務所

<セミナー内容>

1.裁判所の考え方の変化と新しい時代の事件解決

2.交渉学による”主導権の戦略”

3.個人・小規模事務所の売上の上げ方

4.大公開!具体的成功事例

5.2019年の目標設定

6.質疑応答

(講師:Mastership 交渉学コンサルタント 向 展弘/暁法律事務所 所長 指宿 昭一 弁護士)

申込→ https://www.reservestock.jp/page/event_calendar/24076

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交渉学による”主導権の戦略”とは?

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交渉学、問題解決学、経営戦略、認知心理学、コミュニケーション・スキルの「ハイブリッド・メソッド」を導入することで、広告で売上を上げるのではなく依頼者満足を実現することで、事務所経営を成り立たせます。

交渉学による”主導権の戦略”が必要な理由は?

昨今は、弁護士業界も「ホームページ」「マーケティング」「集客」「広告宣伝」などの言葉を当たり前のように使うようになりました。
大手の法律事務所の中には、その資源力(資金力)でこれらに投資をし、大量に事件を受任するところも多く見らせますが、個人や小規模な法律事務所は潤沢な資金があるわけでなく、このようなやり方では太刀打ちができません。
個人・小規模事務所にはそれに相応しいやり方を実施する必要があり、それこそが”主導権の戦略”です。

交渉学による”主導権の戦略”のやり方は?

基本的には、まず受任事件の解決方法を確認・改善します。
ここで、「ハイブリッド交渉メソッド」を使うことにより、滞留していた事件をスマート&スピーディーに解決し、報酬金が早期に入金されることにより、キャッシュフローが健全化、月々の売上が上がります。
次に、商品化と相談受任方法を確認・改善することで、確実な高単価受任につなげます。
その次に、ようやくコストをかけた集客計画に移りますが、上記で資金状態が良くなっているため、ムリなく実施することができます。

謹賀新年(2019年)

2019-01-01

謹賀新年

 昨年は新たな外国人労働者受入れ制度を設ける入管法改定案が臨時国会に提出され、私は衆議院法務委員会で参考人として意見陳述を行い、質疑に応じました。また、メディアを通じて法案の問題点を指摘しましたが、同法案はほとんどそのまま成立しました。法案審議を通じて、パンドラの箱が開いたように議論が噴出しました。外国人労働者と共に生きる社会をどうやって作るのか、今年も考え、発言していきたいと思います。
 昨年6月には、偽装結婚を疑われて在留資格を失い、強制退去を命じられた中国人女性の事件で勝訴判決を得て、確定しました。11月には、技能実習生の残業代請求事件で一部勝訴しました。
 仕事に役立てようと考えて交渉学の勉強を始め、日本交渉協会の交渉アナリスト1級という資格を取得しました。
 今年も、多様な労働問題に対応しつつ、労働者と労働組合の権利の前進のために尽力したいと思います。
 本年もよろしくお願いします。   2019年 元旦

〒169-0075東京都新宿区高田馬場4-28-19
きりしまビル4階 
暁法律事務所 弁護士 指宿 昭一
電話03-6427-5902/FAX03-6427-5903

国際自動車(国際労供ユニオン)事件で都労委が不当労働行為救済命令

2018-12-10

国際自動車(国際労供ユニオン)事件で都労委が不当労働行為救済命令
                2018年12月10日、命令書交付
事件番号 東京都労働委員会・平成29年(不)45号
(2017年6月19日受付、2018年11月6日命令)
 東京都労働委員会は、2018年12月10日、国際労供ユニオンの申立てを全面的に認め、以下を主文とする命令書を交付した。
1 被申立人国際自動車株式会社7社は、申立人国際労供ユニオンと、労働者供給に関する基本契約を締結しなければならない。
2 被申立人各会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
<事件の概要>
 被申立人は東京のタクシー会社大手の株式会社国際自動車(同名の会社7社・KMグループ)。申立人は、同社の運転手が組織する労働組合である。
 被申立人は、多数派の労働組合である国際労働組合との間で、労働者供給基本契約を締結し、65歳定年後には、同労組から労働者供給をするという形式で、1年単位の定年後再雇用が行われていた。
被申立人において少数派の労働組合・全国際自動車労働組合(以下、「国際全労」が結成され、被申立人の賃金規則は実質的に残業代が支払われない違法なものであると主張して、未払残業代の支払いを求めて団体交渉を行い、被申立人が応じないので、東京地裁に提訴した。同訴訟は第1次から第4次までに及び、原告は200人を超えている。同事件第1次訴訟、第2次訴訟は最高裁に係属中である。
被申立人は、国際全労を嫌悪して、国際労働組合とは締結している労働者供給基本契約を締結しないため、国際全労組合員は定年後の再雇用が果たせないという差別的状況が続いている。被申立人は、国際全労には、被申立人の従業員以外の者(元従業員)が委員長に就任していることを理由に、国際全労との労働者供給基本契約の締結を拒んでいる。
そこで、国際全労組合員たちが、被申立人の従業員のみで国際労供ユニオンを結成して、被申立人に労働者供給基本契約の締結を求めたが、被申立人は「国際労供ユニオンと国際全労は同一の組織である。」と主張して、同契約の締結に応じない。
そこで、申立人は、被申立人による申立人との労働者供給契約の締結の拒否が、組合に対する支配介入および組合差別による不利益取扱いに該当することは明白であり、労働組合法第7条1号および同3号に違反する不当労働行為に当たることは明らかであるとして、「被申立人らは、申立人との間で、労働者供給に関する基本契約を締結しなければならない。」という命令を求めて、2017年6月19日、東京都労働委員会に不当労働行為救済申し立てを行った。
2018年12月10日10時に、東京都労働委員会は命令書を交付した。

タクシー7社、不当労働行為 都労働委(朝日新聞)
2018年12月11日05時00分
https://www.asahi.com/articles/DA3S13805923.html
タクシー大手の国際自動車の関連7社(東京)が、少数派の労働組合「国際労供ユニオン」と定年後の雇用契約を結ばないのは不当労働行為だとして、東京都労働委員会は10日、7社にユニオンと雇用契約を結ぶよう求める命令を出したと発表した。

国際自動車事件命令書交付について(東京都)
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/12/10/03.html

国際自動車(国際労供ユニオン)事件で都労委が不当労働行為救済命令(レイバーネット日本)
http://www.labornetjp.org/news/2018/1210kokusai?fbclid=IwAR3qJUc8Gifwi8pEy6jOxFobnpgHvSZRoWypgdcDuN5b1A4KhIQqEwWJ6Rs

「実習実施者等から失踪した技能実習生」に係る調査結果に対する声明

2018-11-20

2018年11月20日

「実習実施者等から失踪した技能実習生」に係る調査結果に対する声明

外国人技能実習生問題弁護士連絡会
共同代表 指 宿   昭 一
共同代表 小 野 寺 信 勝
共同代表 大 坂   恭 子
事務局長 髙 井   信 也

 法務省は、今国会で「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案」(以下、「入管法改正案」という。)が審議されるにあたり、2017年中に退去強制手続きを受けた外国人の中で、「実習実施者等から失踪した技能実習生」に対して行われた聴取の結果に基づき、「失踪技能実習生の現状」と題する資料をまとめたが、「失踪の原因」については、「➀技能実習を出稼ぎ労働の機会と捉え、より高い賃金を求めて失踪するものが多数」、「②技能実習生に対する人権侵害行為等、受入れ側の不適正な取扱いによるものが少数存在」等と報告した(以下、「本件報告」という。)。
 しかしながら、その後、本件報告の基礎資料となった「実習実施者等から失踪した技能実習生に係る聴取票」(以下、「個票」という。)には、「より高い賃金を求め」たという項目が存在せず、本件報告に表れた数値にも多くの誤りがあることが明らかとなった。
 当連絡会は、下記の通り、技能実習制度を巡る法務省の杜撰な現状調査と、事実を歪曲した本件報告に強く抗議するとともに、深刻な構造的問題を抱える技能実習制度の廃止を早急に求めるものである。


 法務省が本件報告の基礎資料とした個票には、「失踪動機」を回答する選択肢として、「低賃金」、「低賃金(契約賃金以下)」、「低賃金(最低賃金以下)」、「労働時間が長い」、「暴力を受けた」、「帰国を強制された」、「保証金・渡航費用の回収」、「実習実施後も稼働したい」、「指導が厳しい」、「その他」の10項目が設けられていた。
 法務省は、当初、2892人から聴取した結果、2514人(86.9%)が「より高い賃金を求めて」失踪していると報告したが、「より高い賃金を求めて」と報告された数は、実際には、「低賃金」、「低賃金(契約賃金以下)」、「低賃金(最低賃金以下)」という回答の数の合計であり、その数も、正しくは1929人(67.2%)であったことが明らかになった。
 言うまでもなく、「低賃金」を理由に失踪する者の中には、最低賃金を大幅に下回る賃金しか支払われず、長時間、あるいは休日のない連続勤務を強いられたため離職せざるを得なかった者もいるのであり、「より高い賃金を求め」たとして、あたかも利欲的な意図から失踪したと捉えることは事実を歪曲するものである。
 同時に、個票における回答の中には、低賃金、暴力、帰国を強制等、人権侵害を窺わせる回答が少なからず含まれており、本来であれば、法務省は、実習実施者等について実態調査に乗り出し、人権救済と再発防止を図るべき立場にある。
 しかし、本件報告は、単に「人権侵害行為等、受入れ側の不適正な取扱いによるものが少数存在」と結論づけているのであるから、調査結果の受け止めが不十分であり、真相解明や人権救済の視点に欠けると言わざるを得ない。
 さらに、個票には、送出し機関に支払った金額、借入金の返済方法、実習実施者等における月額給与、控除額、労働時間等、技能実習制度の実態把握に有用な情報が多数含まれている。報道によれば、衆議院法務委員会の理事らが個票を閲覧したところ、技能実習生の多くが月給を「10万円以下」、母国の送出し機関に支払った額は「100万円以上」と回答しているほか、失踪の理由について「最低賃金以下」と回答した技能実習生以外にも、支給賃金と労働時間から正確な賃金計算を行えば、最低賃金以下の支払いしか受けていない技能実習生が相当数存在する可能性があるとのことである。
これらは、技能実習制度の検証のためにも重要な情報であるから、衆議院法務委員会の理事ら一部の国会議員に閲覧を許すだけでは足りず、プライバシー保護の観点から非公開とすべき部分を除き、法務省により手を加えることなく個票自体を公表し、市民や弁護士による検証を可能としなければならない。

 次に、技能実習制度は、途上国への技術移転により国際貢献を図るという名目と、安価な労働者の受入れ制度として機能しているという実体に大きな乖離があり、その乖離は、拡がる一方である。
 しかし、技能実習生は、技能実習制度の名目が引き続き維持されるが故に、職場移転の自由が認められず、深刻な人権侵害に遭っても、帰国させられることを恐れて救済を求めがたい状況にある。
また、多くの技能実習生は、来日前に本国の送出し機関に対し高額な手数料や保証金を支払っており、その支払いのため多額の借金を背負い、来日後は、返済のために必死に働かなければならない状況にある。そのことは、本件報告の基礎資料において、2870人の回答者の内、実に2552人が「借入」により送出し機関へ支払う資金を調達したと回答していることからも明らかである。
 このように技能実習制度は、制度と実態の乖離が解消できず、このことが人権侵害の温床となっているという構造的問題を解消できないのであるから、直ちに廃止するほかない。
 したがって、入管法改正案を審議するにあたっては、技能実習制度廃止の議論を同時に行うことが不可欠であり、当連絡会は、改めて技能実習制度の廃止を強く求めるものである。
以上

新たな外国人労働者受入れ制度に対する声明(外国人労働者弁護団)

2018-11-16

新たな外国人労働者受入れ制度に対する声明

2018年11月16日
外国人労働者弁護団
代表 指宿 昭一

1 新たな外国人労働者受入れ制度
政府は、2018年6月15日、経済財政諮問会議の答申を経て、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(以下、「骨太の方針2018」という)を閣議決定し、この中で就労を目的とする新たな在留資格を創設し、外国人労働者の受入れを拡大することを表明した。そして、これを受けて、同年11月2日、新たな在留資格として「特定技能1号」及び「特定技能2号」を創設し、入国管理局に代えて「出入国在留管理庁」を創設すること等を内容とする入管法改正法案が閣議決定され、第197回国会に上程された。なお、受入分野、技能試験、受入れの前提としての人手不足を判定する方法等の制度の大部分については、同法案が成立した後、法務省令等で定めることとされている。
政府は在留資格「特定技能」を創設することにより、2019年4月1日から、同在留資格に基づく外国人の受入れを開始し、5年間で最大34万人の外国人労働者を受け入れ予定であるとのことである。また、受入分野についても、当初、経済財政諮問会議において示されていたのは、農業、建設、宿泊、介護、造船の5分野のみであったものの、その後の報道によると、外食や飲食料品製造等が加わり、14分野に及ぶ可能性が示唆されている。また、「特定技能2号」へ移行可能な職種については、上記のうち5業種に絞られる可能性も示唆され、現時点では建設と造船のみが予定されているとのことである。
これまで政府は、専門的・技術的分野以外の非熟練労働(いわゆる「単純労働」)としての外国人労働者を受け入れないという方針を堅持してきた。しかし、実際には、技能実習生や留学生といった、本来は就労を目的としない在留資格を有する者が、非熟練労働の分野において就労し、日本経済を支えてきた。
骨太の方針2018においては、「従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する必要がある」と明記されている。これは、「一定の専門性・技能」という限定は付されているものの、従前の方針を実質的に転換し、非熟練労働を含めた外国人労働者の受入れを行うことを表明するものである。
日本社会における少子高齢化及びこれに起因する人手不足は顕著であり、今後、あらゆる人手不足の分野において、同制度が拡大される可能性は極めて高い。

2 当弁護団にこれまで寄せられた相談
 当弁護団では、創設以来、外国人労働者向けの多言語電話相談会を開催するとともに、常設の電話相談を行い、交渉・労働審判・訴訟を通じて、個別事件の解決につとめてきた。
その中では、賃金未払い、不当解雇、労災といった日本人労働者と同様の相談のほか、外国人労働者特有の相談として、以下のようなものが数多く寄せられた。苛酷な労働条件で就労しているが、退職すると在留資格を失ってしまうため職場を変わることができない、来日時にブローカーに多額の手数料を支払っており、退職や帰国することができない、日本で長年就労しているが、母国から家族を呼び、共に暮らしたいといった家族結合に関する相談等である。
 このような相談事例にも鑑みて、当弁護団は、新制度の問題点について、以下の通り指摘したい。

3 新制度の問題点
入管法改正法案によって創設される新制度の詳細については、法務省令等で今後定められる予定となっている範囲が極めて広範であり、現時点では明らかではない部分が多い。しかしながら、技能実習制度やその他の就労を目的とする在留資格において発生した事例に鑑みれば、以下のとおり,新制度でも同様の問題が生じる可能性は高い。
⑴ 職場移転の自由
技能実習制度は、職場と在留資格が密接に結びついており、職場移転の自由を認めないものであったため、技能実習生が雇用主に対して不服申立てをしたり、外部へ相談したり、退職したりすることができず、そのことから様々な労働関係法令違反や人権侵害が生じた。また、技能実習生以外の就労を目的とする在留資格においては、当該在留資格の範囲内での職場移転は形式的には禁じられてはいないものの、雇用主や母国のブローカーの圧力等によって転職が容易ではなく、やはり同一の雇用主のもとで就労を継続しなければならないケースもある。
入管法改正法案では、入国・在留を認めた分野の中での転職を認めることとされており、この点については、一定の評価をすることができる。しかし、上記のようなブローカー等を排除し、職場移転の自由を実質的に保障するためには、ハローワーク等の公的機関が転職先企業とのマッチングや転職支援を行うことが不可欠である。
⑵ 民間団体の関与と中間搾取
技能実習制度では、母国における送り出しと日本での受け入れの各過程において、それぞれ送出し機関及び監理団体という民間団体が関与している。また、送り出し国の農村部等から、都市部の送り出し機関へと候補者を斡旋し、手数料を徴収するブローカーも存在している。こうした、複数の民間団体が、送り出しのプロセスに関与することによって、中間搾取をはじめとする様々な人権侵害が発生してきた。また、その他の就労を目的とする在留資格や留学生においても、虚偽の労働条件を提示し、高額な渡航前費用を徴収する送出し国のブローカーの関与は顕著である。
この点に関する十分な対処をせずに、技能実習制度と同様、母国と日本おいて民間団体が関与することになれば、技能実習制度で生じたものと同様の問題が生じる可能性が極めて高い。確かに、骨太の方針2018では、「今後、外国人材から保証金を徴収するなどの悪質な紹介業者等の介在を防止するための方策を講じる」と明記されている。しかし、現時点では、具体的な方策は省令等に委ねられることとなっている。また、不当に高額の渡航前費用を徴収することや日本におけるブローカーの介在等についての対策は何も示されていない。
少なくとも、外国人労働者の募集及び送り出しは、公的機関が担当すべきである。また、現在技能実習制度において、送り出し国との間で締結されている二国間協定について、より実効的な内容としてうえで、各国と締結を行うべきである。
⑶ 家族帯同を認めないこと 
骨太の方針2018では、同方針で示された「政策方針は移民政策とは異なるものであり、外国人材の在留期間の上限を通算で5年とし、家族の帯同は基本的に認めない」と明記されている。なお、新制度で就労後、現行の専門的・技術的分野の在留資格へ移行し、定住化への道を認めることは、同方針でも否定はされていない。
しかしながら、入管法改正法案においては、「技能実習」で5年就労した後に、「特定技能1号」で5年間就労した労働者は、最長で10年間という長期にわたって、家族の帯同が認められないことになる。外国人労働者が家族と共に暮らすことは、人としての当然の権利であり、短期的な労働力として外国人労働者を受入れ、その労働者の家族結合・定住化を許容しないという態度は不適切である。「労働力」ではなく「人」としての受入れを行うべきである。
新制度は、労働者の受入れのための制度である以上、労働者が望む場合には家族と共に日本に滞在しつつ就労し、一定の場合には、定住化への道を正面から認めるべきである。
⑷ 永住要件について
 新制度の導入に際して、政府は、これまでの永住要件の厳格化の方針を打ち出している。すなわち、現行の永住許可ガイドラインにおいては、10年間の継続在留が要件とされており、さらに、同期間のうち5年間は就労資格を有する在留が必要とされている。しかし、「技能実習」及び「特定技能1号」での在留は、上記5年間の就労期間に算入しないという、同ガイドラインを厳格化する方向での改定が検討されている。
 しかし、既に、⑶で述べたとおり、外国人労働者をいずれ帰国する短期的な労働者として受け入れるのではなく、人としての受入れをすべきである。そして、人として受け入れる以上は、日本への定住化への途も開かれなければならない。
したがって、特に「特定技能1号」での就労期間について、永住要件の一つである5年の就労期間に算入されないとする同ガイドラインの改定は、するべきではない。
⑸ 支援体制について
 骨太の方針2018では、「受入れ企業、又は法務大臣が認めた登録支援機関が支援の実施主体となり、外国人材に対して、生活ガイダンスの実施、住宅の確保、生活のための日本語習得、相談・苦情対応、各種行政手続に関する情報提供などの支援を行う」とされており、新制度においては、受入れ企業から費用を受領することとなっている。
 技能実習制度において、技能実習生からの相談対応や行政手続を担ってきたのは監理団体であった。しかし、監理団体は、既に述べたように、民間の中間団体として中間搾取の原因となるだけでなく、相談のもみ消しや実習生の強制帰国の主導など、権利侵害を助長する主体となることも多い。
 新制度において、登録支援機関は届出制であり、一定の欠格事由等がない限り、届出が可能となっている。同機関の主体がどのような組織となるかは、現時点では明かではないが、技能実習制度における監理団体が横滑りするような事態となることは、決してあってはならない。同機関は、NGOや国際交流協会等が関与して、弁護士も参加する仕組みを構築すべきである。

4 おわりに
以上の点に鑑みると、骨太の方針2018で示された政策方針及び入管法改正法案に沿って、非熟練労働の分野において外国人労働者を受け入れる新制度を創設したとしても、技能実習制度等と同様の労働関係法令違反・人権侵害が生じる可能性は決して低くない。また、新制度が第二の技能実習制度として、構造的に労働関係法令違反や人権侵害を伴う安価な労働力確保の制度となるおそれもある。
そのような事態を防ぐためには、そもそも、入管法改正及びそれに基づく政省令の改正による新制度の創設という場当たり的な外国人労働者受入れ制度とするのではなく、外国人労働者受入れ制度に関する新法の制定を含めた抜本的な議論をすべきである。
そして、どのような制度を設計するとしても、外国人を労働者として受け入れる以上、その外国人労働者に対して労働関係法令が適用されることはもちろん、外国人労働者が労働基本権を行使して、団結することが、法律上のみならず、実質的にも保障されなくてはならない。
さらに、労働力としてではなく、人としての受入れを行うべきであるから、一定期間日本において就労する外国人労働者については、家族の帯同を認め、定住化への途を開くべきである。
 当弁護団では、今後も労働相談、個別事件の解決を通じて、外国人労働者の権利擁護を図るとともに、あるべき制度について、提言を行っていく所存である。
以上

11.9農業技能実習生に対して不払残業代支払を命ずる判決(水戸地裁)

2018-11-11

11月9日、つばさ協同組合事件について、水戸地裁で11.9農業技能実習生に対して不払残業代支払を命ずる判決が出されました。他の請求は棄却されました。以下、報道された記事を紹介します。

技能実習生の低賃金労働 実習先に賠償命令(ゆうがたサテライト テレビ東京)
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/you/news/post_166292?fbclid=IwAR24D4rpaviysVb_k4KEjRqcwW_y_nLBgcSfgOXua05zPAvOv7svyAF8xgA

中国人実習生「残業代未払い」 雇用農家に支払い命令 水戸地裁(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111002000139.html?fbclid=IwAR3ixTozAaoWHUoT716CuWag4uXlZU-oQhx3I2CAtC8bAs-CwpqnSVCQvHc

「時給400円」技能実習生の残業代、農家に支払い命令(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASLC95HNBLC9UJHB00M.html?fbclid=IwAR3ak50Pkdxq7hLKXyuDe57hZ0y2Z3IZwmn9oLrq9oFCDGSyRud2nXniANc
未払い賃金
技能実習生への残業代など、農家に支払い命令(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20181110/k00/00m/040/105000c?fbclid=IwAR17jS-HNwgOJ8X1Q1JxwRTVsKOeveSSp5jetU0MJwG6dnLHZWQi9aQgQdY

「時給換算400円だった」中国人技能実習生の「未払い賃金」支払い命令…セクハラは棄却(弁護士ドットコムニュース)
https://www.bengo4.com/c_5/n_8834/?fbclid=IwAR3St3BIW3z8kAjz_qFSg80u5LM1kYTjzoc6fHUzBw1zs9Mwytq_tsRxdJE
中国人技能実習生裁判で一部勝訴〜「時給300円・セクハラ・人権侵害」の解消が先(レイバーネット)
http://www.labornetjp.org/news/2018/1109shasin?fbclid=IwAR2UK9T_WE2eoSsIFp5AUbDuR7myfkdF91It67AB1L4DWmM_m6S1Ad0BLlc

日弁連人権シンポ「『外国人労働者100万人時代』の日本の未来」

2018-10-06

10月4日、青森で、日本弁護士連合会第61回人権シンポジウムが開催され、私は第1分科会「「外国人労働者100万人時代」の日本の未来」の実行委員(副委員長)として参加し、大坂恭子弁護士と共に、パネルディスカッション「外国人受入れ政策のあり方」のコーディネーターを務めました。パネルディスカッションでは、政府が非熟練の外国人労働者の受入れ方針を表明し、来年4月からの受入れが始まると言われている中で、どういう受入れ制度とすべきなのか、受け入れた外国人労働者への人権侵害を防ぐために何をすべきかについて、この問題について各界を代表して発言し、もしくは、政策の決定を担っている方々にパネリストとして発言をいただきました。
翌5日は、第61回人権擁護大会が開催され、「新しい外国人労働者受入れ制度を確立し、外国にルーツを持つ人々と共生する社会を構築することを求める宣言」が可決されました。

「新しい外国人労働者受入れ制度を確立し、外国にルーツを持つ人々と共生する社会を構築することを求める宣言」
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2018/2018_1.html
宣言全文(提案理由付き)
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/civil_liberties/data/2018_1005_01.pdf

第1分科会
「外国人労働者100万人時代」の日本の未来
~人権保障に適った外国人受入れ制度と多文化共生社会の確立を目指して~

パネルディスカッション「外国人受入れ政策のあり方」
木村 義雄氏(自由民主党外国人労働者等特別委員長・参議院議員)
石橋 通宏氏(外国人の受け入れと多文化共生社会のあり方を考える議員連盟事務局長・参議院議員)
井上 隆氏(日本経済団体連合会 常務理事)
村上 陽子氏(日本労働組合総連合会総合労働局長)
鳥井 一平氏(移住者と連帯する全国ネットワーク代表)
佐々木聖子氏(法務省大臣官房審議官)

<報道>
外国人労働者問題で日本は「ブラック国家」になってしまうのか 日弁連・人権擁護大会 弁護士ドットコムニュース
https://news.infoseek.co.jp/article/bengoshi_8646/?p=2

外国人技能実習制度直ちに廃止を 日弁連、青森市の人権大会で宣言 共同通信
http://www.kanaloco.jp/article/364200

日弁連 「技能実習制度直ちに廃止を」人権大会で宣言採択 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20181006/k00/00m/040/081000c

日弁連主催の人権擁護大会、青森で始まる Web東奥
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/96465

外国人労働者などテーマに議論 日弁連人権擁護大会が開幕 青森 河北新報
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201810/20181005_23044.html

シンポジウム 外国人雇用考える 技能実習巡り意見交換 秋田 /秋田
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20180929/ddl/k05/040/125000c

*9月26日には、秋田でプレシンポがあり、講演をさせていただきました。
http://akiben.jp/event/2018/08/3092661100.html

第61回人権擁護大会・シンポジウムのご案内
https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/organization/event/jinken_taikai/gyoji_jinken2018.html

第61回人権擁護大会・シンポジウム第1分科会チラシ
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/organization/data/181004_symposium_flyer.pdf

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